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 はじめての石見銀山 タイトル−当時の採掘環境

この硬い岩石を、手彫りで600メートルとは、果たしてどのような世界であったの
だろうか。

江戸時代の記録に、その一時期1日5交代で、幅2尺・高さ4尺の広さを10日間
掘って、おおよそ10尺掘り進んだとある。想像するに、落盤、出水、酸欠、粉塵、
油煙、湿気、坑内火災などの劣悪な労働環境、加えて10歳にも満たない年少時
からの重労働で、銀掘りは30歳で<長寿の祝>をしたと、古い記述にあるのも
頷けるところだ。

また、下世話な余談で恐縮だが、銀山では若後家が多く、女は男を複数持つなど
と、当時の修験者の手紙などにも残る。怪我や流行病などのほか、当時<気絶え
・よろけ>といった、塵肺・珪肺などの鉱山病が多かったとある。
このような環境が多くの遺跡に残るように、さまざまな民間療法を生み、神仏への
信仰を厚くし、色々な土俗信仰を生んだ。

しかし、この劣悪な環境を、ただ放置したわけではない。
江戸の末期、備後国の若い医師・宮太柱は、旧い農具の唐箕(とうみ)を改良した
通風装置などを考案し、実用化していた。
また、同じころ備中国の本草学者・中村耕雲は、三瓶山に豊富に自生した薬草を
採取、調合し、効果をあげ、その詳しい処方・効能などの記録もある。

更に面白いのは、送風機を数台連結し、端に薬草を煎じる釜を置き、その湯気を
坑道に送ったという。もちろん二人の合作であった。
他にも色々ある中、甚だ滑稽に思える<梅の果肉入り防塵マスク>などの図面
も残るが、その効果や使用の有無など不明だ。

坑内での労働の様子の一端は、出口に向かう新坑道に展示されている、江戸時
代後期に描かれた<石見銀山絵巻>に見ることが出来る。 地元に残る、当時を
窺い知る貴重な資料のひとつで、潜り抜けて来た狭く暗い坑道を思い起こしなが
ら見るのも良い。

新坑道の展示

絵に簡略・誇張はあるにせよ、特に狭い場所や深い場所での作業の様子、いで
たち、道具や仕掛けなど、興味深いものがある。

ところで、坑道の内部構造を、よく<アリの巣>に例えられるが、絵巻や資料など
から、精度の高い測量技術の存在を加味して、ちょっと気紛れに、大胆にイメー
ジしてみた。 
この一帯に、地下数百メートルにも及ぶ何層階もの地下街があって、あたかも、
通路や階段が、作業場や倉庫が、リフトやウインチが、排気管や排水管が、縦横
に張り巡らされていたのか・・・、などと想像するが、果たして言い得ているのか、
やっぱり蟻の巣か・・・?

たまに尋ねられる事柄で、坑内での坑夫たちの用便・排泄がどのようであったか
についてだ。関連の記述を知らないので識者に尋ねると、かすかな記録があると
いう。

江戸後期の代官所の記録の中に、代官所直営の<大久保間歩>の入り口付近
に「雪隠(せっちん)」の標記があったという。ただこれは、代官所役人の詰所か、
あるいはその付近にあったもので、ここでの議論には足りない。

古くから、厠(かわや=川の上に掛けて作った屋、便所)というように、流れをまたいで用を足す原始的な方法が想像できる。幸いにも豊富に地下水があったことを考えれば、殊更に悩むことではなかったが、ついつい根拠を得て納得したいところだ。

ただ、狭い中に多くがひしめく状況、言わば公共の場所であって、場所や方法などそれなりのルールなり、記録にならない不文律など、ありそうなものではあるが、他の鉱山の例など知らないし、根拠もなくお答えできない。

因みに、「雪隠(せっちん・せついん)」は、中国・浙江の寺で、厠の掃除を司どった禅師の名前に始まるという。


この龍源寺間歩は、全体のわずか4分の1ほどの部分しか見ることはできない。

しかし、このわずかな部分に秘められた、色々な情報に触れ、様々な謎が解けた
とき、訪ねたことの意義深さに気づくところだ。

 

 ■石見銀山の概要
 ■名称の由来
 ■開発の歴史(1)
 ■開発の歴史(2)
 ■灰吹法とは
 ■世界遺産たる価値

 
 龍源寺間歩について
 ■龍源寺間歩とは
 ■龍源寺間歩の内部(1)
 ■龍源寺間歩の内部(2)
 ■龍源寺間歩の内部(3)
 □当時の採掘環境
 
 石見銀山あれこれ
 ■当時の人口について
 ■無駄にも思える大きな通路
 ■産出量・含有率
 ■坑内の明かり
 ■石見銀山ねずみとりの真実
 ■鉱山労働を支えた人々
 ■石見銀山の法制史
 
 動画でみる石見銀山
 ■石見銀山シリーズ(現13編)
 ■世界遺産センター紹介
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 ■石見銀山の真の価値とは
 ■想い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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